コインランドリー

ありふれたような、日常の流れです。

ワタシは貴方と同じ墓に入りたい

感情が爆発して前のめりになったその時、もう止められなかった。誰が悪いわけでもないのに、気持ちばかり進んで、その崖の淵まで走っていくことは容易いことではなかった。

心に突っかかった感情が吐き出て、止まることを知らなかった。「やっぱり君はダメだったね」と、その言葉に恐れるばかりで、ことの発端や真意の経緯など、感情に目隠しされてうまく歩けなかったかもしれない。

 

ずっと誰かに言葉を吐き続けることが怖かった。自分の怒りや感情に自信がなかった。己の言葉さえ信用できず、真実という架空の世界から生まれたような言葉にいつも頭を抱えていた。ワタシの言葉はいつだって、誰の胸にも届かなかったでしょう。

 

それは届かないと同時に、相手の言葉も遮られた茨に跳ね返されるばかりで。届けられた言葉たちは報われることなく、報うことなく空中分解するばかりだった。その中にはきっと、多くの大切な言葉が落ちていたと思う。見て見ぬ振りをして、目を背けて歩いていたはずなのに。

 

抑えられない感情をそこに現れた人間にぶつけた。きっと論点もずれていたし、言葉がどれほど届いたかも定かでない。それでも電話越しに聞こえる「うん、うん」という静かな相槌は、深淵に落ちた悲しみを少しずつ引き上げてくれるようだった。

きっと今までのワタシだったら、傷つける言葉や二度と元に戻ることのできない棘をやみくもに振り回して殺し続けていた。自分の口から出る言葉の端々が、其れ等がうまく形になっているかは分からない。それでも自分なりに形を整えながら不器用に、そう彼がいう「しおりちゃんは不器用なりに」という言葉を借りるなら。留まることの知らない感情の波に溺れながら、貴方を理解しようとする気持ちが確実にあった。

 

こんなに多くの言葉を並べても、きっとそれは「彼の方が大人だな」と言ったら終わってしまう。要約すると、ワタシは子供で、人へ自分の感情をぶつける方法を知らない。ぽっと出で溢れた言葉はきっと不恰好で情けなくて、理不尽な形をしたおぼつかないものだったと思う。それでも彼は真剣に、咀嚼しようと、静かに頷いた。

そして彼の口から出る感情の露呈が、やっとここに届いた。

 

ずっとわかったような顔をして生きてた。誰の言葉も本当は届いていなかった。人の悲しみも苦しみも痛みも、心の底から悲しむことなどできなかった。それでも出てきた貴方の感情一つ一つはとても新鮮で、熱かった。ここにちゃんと届いています。

 

電話の最後で言った彼の「ごめんね」と「愛してる」そしてこらからも末長くよろしくね、と添えられた少しぎこちない、引き止める言葉。ワタシは不器用だから「こちらも突っかかることはあるだろうけど、これからもよろしくね」なんて意地悪な言葉が出た。少し困った風に笑いながら、おやすみ。

 

ワタシは多くの物事や振り幅を彼という男にぶつけているかもしれない。端的に言えば、「甘えてる」という表現にとても近いものだよね。「好きだ、嫌だ、」などの瑞々しい感情全てがダイレクトに伝わって、伝えながら、2人の時間が確実に刻まれていく。過ぎた時間は過去じゃなく、常に脈打って血が流れてる。ワタシたちの過去も未来も、2人の関係性が心臓だとしたら、その経過する時間は血液で、ずっと循環してる。鼓動が進むたびに、少しずつ終わりを迎えるために、新しい扉を開いて始まりを築いていく。それでこそワタシたちは2人で一人前なのだから

 

彼との時間は、脈打つ心臓を突き動かす大事な血流なんだよ。それらが止んでしまったその時、ワタシたちは一つの終わりを迎えて、死を迎えるだろう。

 

この鼓動を絶やさないためにも、ワタシは貴方が必要で、貴方にはワタシが必要でしょう。だから一緒の墓に入ろう。

 

これからも末永く、よろしくね。2人でたくさん苦労しながら、一緒に苦労しながら、生き続ける限りこの心臓を動かそう。

 

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