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日々、行き詰ることは腐るほどあるし、それでも死に物狂いで歩いてる。
彼からもらった10年日記を2日分書き忘れても、私はもう泣かない。今日は帰ったら美味しいキムチ炒飯をを食べて寝るって決めてるからね。
本も読めないくらい電車はすし詰め状態で、他人の皮脂や油の匂いが漂ってる。後ろに立ってつり革に捕まるおじさんは、なぜか怪訝な顔をして私の背中を押してくる。
気を紛らわすために、周囲の人間が撫でるiPhoneの指先を辿ってる。そこに映る景色は友人との楽しそうな写真や、誰かとの深刻なライン、暇つぶしの短文投稿サイト。
隣のOLは重たい一重まぶたに、主張が激しい付けまつげを付けて、メーテルみたいになってる。その腕にはピンクベージュのApple Watchが輝いてるね。
太めの前を見ると暗い窓ガラスに自分の姿が映る。刈り上げが伸びて少し気持ち悪い。明後日には彼のバリカンで整えてもらわないと。
唇はコンビニで食べたジャンクフードの油で潤ってる。
疲れた体を引きずって、私はいますがなでも帰りたいあの家に。