コインランドリー

ありふれたような、日常の流れです。

電車が止まって、1時間近く車内に閉じ込められた。閉塞的な空間で息が詰まりそうになりながら逃げるように本を読んだ。

そこに書かれていることすべてがあまりにも胸が苦しくなって思わず彼に会いたくなる。会いたい人がいて、会える人がいるのは幸せなことだ。それでもいろんなことを考えて、私は誰かにとっての特別でいることができているのだろうか?と考えてしまう。

 

今日はいろんな話を聞いて、会社ランチ会で美味しいものを食べて。

みんな各々に社長に好きなことを言い、社長はのんびりした人だからそれを困った顔で受け入れる。ランチ会も、飲み会も、全部社長の負担であることや、仕事に関する我儘や望みは割と叶えてもらえるし。この会社で働くことで、次の社会で揉まれることはできるのだろうか?と考えてしまう。

喜怒哀楽の激しい情緒不安定な上司や、陽気な関西弁の上司、何を考えてるのかよくわからない温厚な社長に、少し変わったインターンやアルバイトの同僚たち、社員はアスペルガーや気の緩んだ人ばかりでのらりくらりと小さな会社は運営されている。

どこかで憤りや自分の意識をぶつけられずにいる部下や、それに対して年齢の焦りを感じているだけと蔑む気の緩んだアルバイト。会社には質のいいコーヒーメイカーと、それに合わせてカントリーマアムやチョコのお茶菓子が色とりどりと並べられているデスク。

アスペルガーの先輩上司は遊戯王が大好きで、社長に長いって遊戯王カードのサイトを運営したり、ここの会社にしか存在しない空気にもまれながら与えられたことをひたすらにこなして行く毎日は無情にも過ぎていくんだね。

 

週に一度は恋人と会い、お酒を飲んで、服を脱いでベッドに潜り込む。

週末は1人家でテレビをぼーっと眺めたり、ひたすら本を読んでごはんをたらふく食べる。どんどんそうやって、私はなんでもない日々の中に特別や小さな幸せを積み重ねて年をとっていくんだな。

 

東京の鳩は近寄っても人を警戒しないし、私の住んでいる土地は東京なのに驚くほど寒くて、平和だし。NHKの取り立てのお兄さんはすごく怖い。電車から見えるピンク色に胸を躍らせながら明日も中央特快に揺られて、人混みにもみくちゃにされながらお金を稼ぎに行く。

なんでもない毎日が続いて、年取って、いつか死んで行くんだな。

わたしは、わたしの身の丈にあった幸せがここにあるはずなのに、なかなかそれを噛み締めないで生きている気がするんだよ。あまりにも邪魔なものが多すぎて、もっとクリアな世界だったら幸せを感じることができるのに。生きていると世界が霞んでしまうことは沢山あってさ、だからなかなか自分の世界での幸せを噛みしめることができない。

 

誰かの自慢も、誰かの好意も、今のわたしにとっては見るもの全てを濁らせる材料でしかないのに。

仕事をして、帰ってお風呂に入って、体を温めて、大好きな香りに包まれて眠らそれだけで幸せなんだ。たまに好きな人に会ったら、美味しいものやお酒や、綺麗なものに触れられたらそれで幸せなのに。そうもいかない。

誰かの些細な歪みを見たり、攻撃を受けたり、誤った好意を向けられたりしてしまうことへの耐性がまだ整ってないからうまく歩けなくなる。難しいな。生きるって本当に。それでもわたしは生きるしかないから、生きるんだけど。

 

今年はまだ桜を見てないんだけど、誰か一緒に桜見に行きませんか。 

花見という名目だった飲み会から、雨で断念して友人宅で大勢の人々と飲んだ。お酒をたくさん飲んで、いろんな音楽を聴きながらまったりと時間は流れていって。笑いの絶えない空気に居心地を感じながら楽しんだ。

 

帰りは終電ギリギリになってしまい、合鍵で彼の部屋に入ると部屋の電気は微かに灯してあるだけ。彼はベッドに潜り込み眠っていた。「遅かったね」と言う彼は優しく抱きしめてくれて安心をもらった。

午前休を取ってくれたので、二人でのんびりと眠って、布団の中でふざけ合いながら時間を刻んでいく。途中で腹痛と気持ち悪さに襲われてどうにもいたたまれない気持ちになったけど。それでも二人でのんびり過ごせて本当に幸せだったね。ありがとう。

 

帰りは新宿まで出るルートで帰る。ふらっと新宿のルミネに立ち寄ると、季節の移り変わりで、からびやな店内に並ぶのは半袖の服ばかりだった。可愛らしい形をした袖の短い服たちを眺めながら、わたし一生着ることができないのだろうか?と考えた。

ボロボロの腕は、もう何年も露出することなくなってる。外出の際には黒いウォーマーを付けて出掛けることがデフォルトになった。ウォーマーを付けていると半袖の服のデザインは限られてしまう。女性らしい少し特徴的なデザインは、それを一枚で着ることで、美しく映えるはずなのに、腕に黒いカバーをつけているとおかしいから着ることができない。

 

なんでも、半袖のワンピースを着たい。

 

自分が行ったことに後悔はしていないけど、それでもわたしは、纏えるものが限られてしまうことに悲しさを感じる。