コインランドリー

ありふれたような、日常の流れです。

幸せと多幸とパスタ

物思いに耽っている。幸せすぎて、なかなか眠りにつかない。この気持ちのまま眠るのがもったいなくて、明日も朝が早いのに多幸感を抱きながらタバコを片手にご褒美のピルクルを飲む。最近のわたしの体はピルクルとコーヒーで構成されてるかのようだ。

 

彼に会いにいった。ご飯を食べに来ないかい?と誘われて彼に会いにいった。駅に着くと待ち合わせが下手くそなわたしに少し不機嫌そうな顔の彼を見て心が萎んだ。それでも一生懸命化粧をして、眉毛を描いて、中学生が前髪の位置を気にするみたいに風で前髪を触る。

電車に乗ると彼はふざけて、わたしを笑わせる。本当に幸せで思わず笑みが溢れてしまう。

 

わたしはこの距離感を愛してる。

 

まずは手始めにジンバックで乾杯。彼の作るお酒はちょうどいい濃さで美味しくて、乾いた喉をどんどん潤す。

フライパンで炒められたニンニクはいい香りがして、ベーコン、オリーブオイル、小松菜、パスタ、バジルをアクセントに加えられて、美味しいペペロンチーノの出来上がり。

白ワインのアルコールを飛ばして、素材の出汁が染み込んだパスタはとっても美味しくて。お腹がはち切れそうなくらい食べた。お味噌汁はシンプルに野菜と豆腐の具材。涙が出るほど美味しくて、心も体も温まってしまって。

 

温かいコタツの中でテレビを見ながらジンバックを飲む。彼はマックを開いて仕事をしながら優しくキスをしてくれて。「仕事忙しくてごめんね」と言いながらくっつくことを許可される。

痩せたねって言われたくて、痩せたの!って言いたくて、我慢できない気持ちを抑えながら彼の横で心も体も温もりを味わう。

 

帰りに終電まで走って、見送る彼を背に電車に乗り込み帰宅。家に帰りぼーっとしてからお風呂へ。熱いシャワーを浴びて、ボディクリームで体をマッサージして冷たい布団の中に潜り込む。明日も仕事で朝が早いのに、なかなか寝付けないんだ。

 

ずっと疲れてる、ずっと苦しい。それでもわたしはちゃんと歩き続けられる証がそこにあるから、今あるべきことを消化していく。転ばないように、ゆっくりでいいから歩いて行こうね。

 

 

ああ、昔は帰りたくないってずっと泣いてたよね。わがまま言って無理やりホテルに連れ出してセックスしたり、そんなことばっかりしてた。どこにいても気持ちは空虚で、誰とセックスしても悲しかったよ。

仕事もしてない、男もいない、家族も嫌い、守るものは何もなくて、ただ途方に暮れて生きてるだけだった。人は何か自分の中に守るものがないと死んでしまうんだ。それは、何かがきっかけになってどん底まで落ちるんじゃないよ。失うものが何もないから、落ちるとこまで落ちて、登り方を忘れちゃうだけなんだ。

 

人は何もなくなって悲しくなるし、さみしくなるし、苦しくなるよ。それは誰が悪いわけでも、あなたが悪いわけでもない。

 

 

家に帰りたくて仕方がなかった。美味しいご飯も大好きな彼もそこに待ってるはずだったのに、月曜日という日に心が嬲られてしまって、明日も変わらずに前向いて生きなきゃいけないと思うと甘えられなかった。

ああ、私は社会人なんだなって実感した。美味しいご飯や愛よりも、明日の自分のモチベーションを取った。それでも仕事があるから、張り切って前に進まなくちゃいけない。「会いたい」と言葉は漏れたけどそれでも「我慢する」って張り切ったんだ。えらいぞわたしって自分のことを褒めてあげたんだよ。かわいいぞ!私!って具合に。

 

誰も羨まないし、誰も私を見ていない。どんなにかわいい下着をつけても、前髪を伸ばしても、化粧を変えても、痩せても、だれも気付いては暮れないし本当にの意味で誰も私のことを見てないと感じる。それでも日々頑張ってる私は、私がかわいいと思うの。誰に、馬鹿にされても裏切られても罵られてもここに立って生きてる限り、進み続けてる限り私はかわいい。

 

みんな頑張ってるし、みんなかわいい。生きてるそれだけで、生きるためにお金を稼いで自分の食い扶持を繋いでるだけでかわいい。

毎日ご飯を食べてお風呂に入って服を着て外に出て誰かと喋って、それだけで最高なのに。世の中にはくそったれな奴も、ゴミも死ねばいいって思う奴も腐るほどいるけど。それでも生きてるんだよみんな。

舐められたり、蔑まれたり、馬鹿にされたり、利用されたり、そんなこともたくさんあるけど、それでもぶん殴って張り切って生きていくしかないんだから。

 

腹立つことも、殺してえことも、殴りてえこともたくさんあるんだから。

それでも最後に、自分の城でお香をたいて、いい匂いに包まらながら暖かい布団に包まれて眠れたらそれで幸せなんだ。刺したら明日がきて、仕事になってまた働かことの繰り返し。休みの日には本を読んで音楽を聴いて、散歩をしながら知らない街を体感する。

 

あーアンフェアの雪平かっこいいな。元彼はこういう女が好きで、私はずっとこんな女になりたかった。

 

休日なのに何故か4時間しか2時間弱しか眠れずに、6時に起床。外は雨がしんしんと降って部屋の中は極寒の勢いたった。エアコンをつけてテレビをつけてみるも、休日の朝に放送されている番組はどれも目を奪われるものなど一つもない。

 

タバコを吸って吐き気と腹痛に襲われながら、冷えたトイレに駆け込んで空っぽの体から液体を無理にでも吐き出そうとする。

唯一暖かいウォシュレットの便座に頬を付けて、虚無感を味わいつつ、落ち着いたところで布団の中に潜り込む。

 

目がさめると午後の1時を回っていた。眠るだけで終わってしまった休日さえも愛おしく思い、何もないこの時間に多幸感を感じる。

最近はあまりにも人に会いすぎて、寂しさと憂鬱な気持ちと、他者に触れる様々な刺激に心が苛まれていたのでちょうどよかった。

 

エアコンの温度は28度。冷えた部屋を暖めてお香を焚く。部屋に充満するムーンの匂いは落ち着きを取り戻させてくれる。

壊れたメガネをゴミ箱に放り込み、色の入ったカラーコンタクトを付けて視界をくっきりさせる。恋人と友人とたわいもないやりとりを繰り返しながら読書に耽る。

一人の時間はとても落ち着くし、心が休まる。明日からまたいつも通りの日々が繰り返されて行くことに胸を打ちひしがれながら、それでも歩くことをやめずに進み続ける。

 

生理は終わったばかりだし、心のホルモンバランスは順調なはずなのに何処かで小さな刺激に苛立ちと虚無感を抑えきれない。

あの時言われたあの言葉はきっと忘れられずに心の中にしまわれるのだろう。私のプライドはズタボロにされた。「飯島さんってガードやるそうですよね。彼氏いるけど、行けそうな感じがする」という言葉と共に誘われたラブホテル。その時こそ笑って促すことは出来たけれどもいま考えてみれば殴りかかってもよかった。もしも今なら憤慨にして、相手の顔が腫れあがるまで殴りたいと思える。

誰かを評価するほど私は立派な人間じゃないけど、冴えなくて何一つ魅力を感じない大学生の後輩にそんなことを言われて、私も舐められたもんだなと感じた。今まではそんなことで怒りを感じることはなかったけど、とても悲しくて、プライドは傷つけられて。私の身の振り方は間違っていたのか?

ただ、楽しく友人として酒を飲み開催して二人になった時に言われたセリフ。ふざけるなよ。彼氏が居るからそういうことには乗り気になれないし、そもそもお前みたいな男とそんなことをするほど私は自分の価値を低く見てない、なんて一人で頭の中で暴言を吐くしかなくて行き場を失われてる。

 

どこに逃げたらいいんだろう。人と会えば何かしらの衝撃があって、それはいい意味でも悪い意味でも。

誰かと会って食事をしたり、お酒を飲むことは楽しいけど、なるべく不快な思いはしたくない。それでもそういう事柄を招いてしまうのには自分にも原因があるのか?

信頼してた人々に裏切られる日々はあまりにも残酷で、何を信用して、何を頼りに生きればいいかわからない。誰かの些細な喜怒哀楽さえも受け止められるほど余裕はない。

 

だから私は、誰の手にも届かないくらい、簡単に手を出せないほど綺麗にならなくちゃ行けないのに。全然うまくいないな。

男も女も、どっちにしても面倒な生き物だ。楽しくいたいだけなのに、真っ直ぐすぎても、緩やか過ぎても、うまくバランスが取れなくてこじれることはたくさんある。腹立たしいね。