コインランドリー

ありふれたような、日常の流れです。

印象操作

これまで長い間、手探りで化粧をし続けてきた。自分の中で何かを否定したり、肯定したり、それらを埋め合わせるように色を塗りたくってたように感じる。

最近になって、少しずつ基本的なことを学ぶように努めてみた。何をどこに塗るのか?全体のバランスや配色の意識など、どこまで手を施すのか。差し引きを繰り返すことで、顔が驚くほど変わったように思う。少しのさじ加減で、こんなにも自然な仕上がりになるんだと感心しちゃったよ。

服も同じこと。ある物を適当に合わせて、その日の心を映し出すかのように。気持ちが沈めば沈むほど、身に付けるものや装いのバランスは歪になって目を逸らしてばかり。今ではどんな時でも、些細なバランスに注力して服を選ぶようになった。何年も買わなかった服も、手に入れる機会が増えたね。良いものを手に入れると、気持ちが高揚するんだ。不思議だな

 

化粧や服に対する熱量の変化から、ふと昔のことを思い出した。被服心理学について。化粧や装いによって、人の心理状態に与える影響を学んでいた。身に付ける物すべては、その人の地位や名誉など、個人を端的に表現する最大限の材料だ。自己のアイデンティティを主張するための大事なアイテム。深掘りすればするほど、圧倒されら学問なんだよ。

今まさに、私は被服心理学の被験者になっているかのように、日々感じる。どれだけ心が泥水のようになっても、綺麗に身なりを整えて外に出かければ、ほんの一瞬でも気持ちの切り替えをすることが出来る。私の心に、大きな影響を与えている。

 

人に見られると言うこと、自己のアイデンティティをいとも簡単に操作できると言うこと。恐ろしくも、魅力的なものだよね。権威ある先生の言葉であるように、カメレオン表皮なんて良く言ったものだ。

他社はの印象を簡単に操作できる。

 

お洒落をすると言う意味でも、自分の魅力を引き立てる物としても、もちろん楽しみを与えてくれる。ただその根本には、誰かを騙すことが出来る力を持っているんだなと考えると、もっと面白みを感じる。だから好きなんだよね。

 

当たり前田のクラッカー

独立洗面台の照明は明るくて、スキンケアやお化粧も捗る。お風呂はいつでも一定の温度を保ってくれて、どんなに長く浸かってもホカホカ。シャワーの水圧も強いから、すぐに泡も洗い流せるんだ。

ベッドが広いから二人で仰向けになっても余裕で眠れるし、寝返りだって打てる。ちょうどいい硬さのスプリンが身体の重みを受け止めてくれる。秋春用の掛け布団は薄いけど、すごく暖くて快適だな。枕も二つあるから、取り合いになったりしないんだよ。

家に帰ればパッと明るい部屋がそこにある。ソファにどかっと座って液晶が美しいテレビを見ながら一休みだ。キッチンも中腰になって料理をする必要がないね。氷も勝手にできてるから、製氷皿にお水をこまめに入れなくていいし。冷蔵庫は大きすぎて、なんだか手持ち無沙汰になってしまいそうなほど。

 

これが当たり前の生活なのかもしれない。今までのように、狭いベッドで眠ったり、霜ができる冷蔵庫もないんだ。

これまでだって、ずっと楽しかった。限られたものの中で、自分たちの生活を作ってきたよね。今度は二人で一から生活を作る時が来た。快適な暮らしに、また一つ色を載せてく。実感がわかないようで、いつか当たり前になる毎日なるのかな?まだ足りない物は多いけど、少しずつ、これまでと同じように二人の居場所を作っていきたい。

叶わぬ夢

2年間生活してきた家を出て、新しい環境での暮らしが始まった。勝手がすべて異なるため、なれるまでに時間を費やすだろうな…と骨が折れる。

 

引っ越しの当日、父と母がレンタカー屋さんでハイエースを借りて来てくれた。朝早くかさっさと作業を済ませたおかげで、22時頃には全ての作業が完了。まだやることはたくさん残っていたが、最低限の生活を維持できる環境は整ったと思いたいな。

 

三連休は、彼も運良く休めたので、二人で残りの作業を片付けたりなどした。猫はひたすら不安な顔を浮かべて、私と彼が見えなくなると大騒ぎする。声が掠れてしまいそうなほど、悲しそうに中から、こちらまで不安になる。ご飯もあまり食べないんだもん。どうしたの

 

引っ越して、生活も新しくなり、何もかもすべての理想が整った快適な家。ただ其処に帰るとき、まだ他人の家に足を踏み入れるような気持ちになってしまう。

父と母を見送ったレンタカーのテールランプが寂しさを誘った。「私も連れて行ってよ」って、頭の片隅で考えちゃったかもね。

 

部屋が広くなれば、彼との物理的な距離が遠くなるように感じる。感じるじゃなくて、実際にそうなんだ。心の距離は重なっているのに、手を伸ばしても触らない感覚。

ご飯を作ったり、食器を洗ったりするときに、彼の姿は見えるけど。寝室に引っ込んだら、一人ぼっちでリビングのテレビを淡々と見てる。

 

床はとても冷たくて、部屋が広い分エアコンの効きも悪くなる。猫が必死に私たちを追いかけ回してそばに寄ってくる気持ちは、わからなくもないね。私も猫と同じように、不安で寂しくて、悪戯だってしたくなるもんな。

 

春になれば、この景色や気持ちも少し晴れるのかな?叶わぬ願いが報われなくても、ちゃんと消化されていくのかな?

 

帰ったら、猫の餌とおトイレを掃除して、お弁当の支度をして、お風呂に入って、明日のおにぎりを準備したらテレビを見ながら一息つく。コーヒー買って帰ろうかな。