コインランドリー

ありふれたような、日常の流れです。

不安への旅立ち

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退屈な毎日を覆すために、私は荷造りをして部屋の掃除をする。きっと明日からご飯を食べないだろうし、毎日健康的にプールへと通うことになるだろうと思う。彼からもらった度入りの水中眼鏡はなくしてしてしまったので水中に潜ることはできないし、水中から見えるあの景色を拝むことはできない。

 

仕事を一週間ずる休みしたがために、耳鼻科にいって診断書をもらわないといけないらいど、今日は耳鼻科に行く元気があまりない気もする。でも、私は耳鼻科い行って診断書をもらわなければ公的に休みをもらえないブラック企業勤務(キャバクラ)

仕事を一週間休むと無気力な気持ちが増幅して、寝る前には輸入禁止になったデパスを6錠追加して気持ちを切り替えたような気分になるけど。23歳にもなって何をしてるんだろうってすぐに年齢というものに囚われて、すべてをそのせいにするのも悪い癖だ。

 

 

私は東京に行くことにで何か変化することはできるのだろうか。

彼の言う「ちゃんとしてくれないと嫌だ」というセリフが心に刺さる。わたしはどこまでちゃんとすることが出来るのだろうか。いまのままで自分がちゃんとしているとは思えない。もちろん彼と暮らす生活は楽しくて幸せだけど、それだけじゃ世界はまかり通らないから難しい。

 

ある友人からLAに遊びにおいでよという誘いをもらった。自由な世界は魅力的だ。何も持ち合わせていない私がおあがりさんで唐突に海外へと飛び出したところで世界はどえほどかわっていくのだろうか。

そんなことを考えながら、私は彼氏という人間との幸せを願って東京へ向かう切符を手に知るだろう。大荷物と不安を抱えて。期待は絶対に背負い込まないように。

 

 

ずっと不安だ。ずっと怖い。でも、これを誰かに打ち明けようともそれは私の言葉というフィルターにかけられてしか物事は伝わらない。だから私は、前に進むしかない。それを祝福してくれる人など一人もいないのだけれどもね。

 

 

枕を濡らす

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彼はそう言った。

 

勢いあまって飛び出した私の足は小田急線の新宿方面へと乗り込む。彼のもとへ到着するのは23時を回ったころ。真夜中の小田急線はのんびり新宿へと私の足を運ぶ。二か月ぶりの彼との再会。

突然飛び出したその身体は身だしなみもまともではなくて、汗だくになりながら山手線への乗り換えを走る。綺麗に整えられた化粧も髪の毛もすべて台無しになるくらいに何もかもが崩れ足取りはおぼつかない。それでも私はあの電車に乗って彼のもとへと走り出す。「さみしい」と嘆いたその言葉ひとつで身体は東京へと向かう。

 

「自転車置き場で自転車を探しておいて」というのが待ち合わせの合図。いつものあの場所。彼がプレゼントしてくれた自転車を取りに行く。

待ち時間はとても長い。何時其処に訪れてしまうのか、永遠に現てほしくないという不思議な気持ちを抑えて待ち遠しさが抑えきれない。いつもやることのないポケモンなどを開いて気を紛らわしながら待ち遠しい気持ちをなんてことのないようなものにするために。

ふと後ろから足音が近づいてくる。後ろを振り向くと、其処にには彼が立っていた。身長の高いその姿は、上を見上げる勇気さえなくて「久しぶり」と少し視線を足元に向けて。にっこりと笑う彼は「鍵がほしい?」とポケットの中から鍵を取り出すふりをしていつものようにジャラジャラと沢山詰め込まれた小銭を掌に置く。「足りないな~」などと茶番を繰り返しながら、繋がった時間がそこに折りなされていく。

二か月という時間の隙間など存在しなかったかのように、再び私たちの時間が少しずつ繋がっていく。

 

身体をぶつけ合いながら二人で夏の夜を歩く。初めて過ごす夏。スターウォーズのキャラクターがプリントされたTシャツからは白く華奢な腕が伸びるて、細い脚を包むスキニーデニム。

少し遠回りをして、自転車に互いの荷物を詰め込んで歩く。

家が近くなるたびに人気も少なくなって、ぶつかり合う肩と肩が胸を膨らませる。長く白いその首、見慣れた頬の黒子も、滑らかな肌も確実に私の隣にある。悪戯っ子のように耳を食べられて撃沈。何もかもが夢のようで心が砕け散ってもう二度と再生できないみたいに。彼の些細な悪戯さえもすべて脳のどこかの機能を狂わす。

 

互いに服をすべてはぎ取って布団に包み込まれる。いい匂いのする彼の寝具。髪の毛からは懐かしいシャンプーの匂いが香ってくる。滑らかな肌。美しい彼の曲線美が心をそそる。触れたら壊れてしまいそうな尊い美しさがそこにはあって、おこがましさから少し距離を取りながら。「抱きしめてくれないの?」と囁く言葉で貯め込んでいたものが一気に放出されるように彼を抱きしめる。優しいキスに柔らかい唇。多幸感が私の中のすべてを巡る。

 

 

辛かった日々、忘れられなかった思い出、よぎる体温、すべてのものが私のもとから再び始まっていく。同じ過ちを二度と繰り返すことのないように。一つ一つを丁寧に、忘れないように消化していこう。

最後に渡された部屋のキーと共に私は東京から鎌倉へと帰る。身体にはまだ彼の香りが残っていて、とても心地がいい。まだ彼が取り巻かれているようで。

ゆっくりと話合いをして「もう怒ってないよ」と彼は優しく私をなだめてくれて。互いに傷付いた心も。二か月間の空白も、隙間も、少しずつ埋められていくように。固まった何かは彼の優しさで少しずつ溶かされていった。

 

 

日々は瑞々しい。今日も私は生きる。

 

 

幸せを大切に持ち歩いて

最近はずっと天気が悪いね。雨ばかりで、晴天の空を忘れてしまいそうだよ。ここのところは毎日せわしなく働いている。休日の心地よさや時間の流れも忘れてせっせと身を粉にして、働き眠って生活しているかな。とても健康的だよ。

 

君の生活はどうですか。わたしは最近ね、大好きだった恋人と復縁しました。酔った勢いと嘘をついて恥ずかしさをひた隠しにしながら、すべてを打ち明けた。久しぶりに聞く恋人の声はあの時となにも変わらなくて、早くこの人の手を握りたい匂いを嗅ぎたいとばかりに、気持ちがぐっと引き寄せられました。

彼は「未だによくわからない。どうしてうまくいかなかったのか。上手くできたらよかったと思っている。後悔している」という言葉を紡いで、その勢いに任せてわたしは自分の思いをすべてぶちまけた。淀み出るように溢れる気持ちと涙はとめどなく、言葉はうまく出てこなくて。「それでも、私はあなたが好きで仕方がない」と気持ちを伝えた。破かれた手紙も、捨てられた指輪も。時間は事実として其処に残り、もう二度と戻ることはないものはあるけれど、再び始まる物語が確実に存在している。

お互いにいろんなことが作用して、行き違いが起きていたことを、ゆっくりと話し合いながら、少しずつ空いた溝を埋めるように近づいていく距離がそこにはあって。電話口で酔っぱらった彼は何一つも変わらない。大好きだったあの人は変わらず東京にいる。

彼はとても元気そうで。いまの仕事をやめて転職に熱をだしていた。

「ねえ、ほんとうに言ってるの」と不安げな彼のメールが二日間おきに送信されてくる。私は嘘つく余裕もどこにもなくて「いまでもあなたを愛している」旨を言葉足らずに伝える。少しずつ彼のやり方で、言葉が紡がれていく。「あの、できたら、また一緒に暮らしたいです。幸せでした」と彼は言った。

一緒に暮らした東京での日々は本当に煌びやかで、何もかもが美しかった。どこで足を踏み外しあたかも目で追うのさえ億劫に思うほどに幸せな日々で。「ほんとうに楽しい日々だったね」と彼を思い出話を語りながら「また一緒にお散歩しようね」と約束をした。カメラを片手に。

 

 

再び彼との生活が始まる。今はお互いに仕事も忙しく、まだ一緒に暮らすことは出来ないけれど、なるべく時間を取れるようにして、多くの時再びを彼と共有したい。隙間を丁寧に埋めていくように、変わらぬ時間がまたそこに続いていくように再び始まればいい。あの穏やかな時間が。

同じ過ちを繰り返さないように。

 

お母さんにもきちんと相談をして、家を出ていくことを決めた。勢いで家を飛び出すのではなくきちんと計画を立てて。ある程度貯蓄を貯めて、来年の引っ越しの為にもお金を貯めなければならない。

向こうで仕事の当てを探してから、此処を再び出ていく。

楽しいとか、幸せとか、寂しいとか、好きとか、ただそれだけの感情で突き動かすものじゃなくて。きちんと未来のことも視野に入れてマイナスも許容できる心を持ちながらのんびり二人で歩いていきたい。