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コインランドリー

ありふれたような、日常の流れです。

女が一人

洗練された動きで艶めかしく腰を曲げる。生成りのワンピースの襞は女の動きに合わせてフローリングを優しく撫でる。一つ一つの動作がすべて映画のワンシーンを覗いているような。

水槽で苦しそうに泳ぐ魚の尾びれはボロボロで、動きづらそうに、ほとんど退化しつつある小さな横びれで水中浮遊する。

薄化粧で、綺麗な二重を作る女はそれはきっと誰かを魅了する武器であるように、嫌みのない自然な振る舞いで長い睫毛を伏せて水槽を眺める。恐ろしいほどに優しい微笑みを作って「君は何を考えている」と彼に言葉を投げかけるだけで水槽の中の生き物は息が吹き込まれる。彼が生きているという事実を証明する。

 

「綺麗だね」 

「あまり喜べないの。次に再開したとき、綺麗な私が健在しているかどうかわからないでしょう。髪がはねていたり、化粧が上手くいっていなかったり、肌荒れしていたり、気になる」私は誰かの綺麗という言葉に全力で答えられないよとでもいうように照れ笑いをした。

「貴女といる時間は 心地いいよ」

「えへへ」

恥ずかしがる女は、再び艶めかしく華奢な腰からヒップに繋がるラインを高く上げて、長く伸びた髪の毛を振り下ろし顔を床に撫でる。女は女であるがゆえに、鈴を鳴らすように、少女のように笑う。彼女にかけられた女という意識を取り払われない呪いに飲み込まれて、本質的な少女性を見失ってしまったような儚い表情で笑う。

 

おしまい